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インフルエンザの予防接種は効果があるのか?

ここでは、「インフルエンザの予防接種に効果があるのかどうか」をまとめていきたいと思います。

 

2015年12月10日現在、できる限り多くの疑問点を中立的に考察して記事を書きました。

 

なぜこの記事を書いたかというと、私自身、「薬学部で学んだから理論上ワクチンに効果があるのは分かっているけど、実際にインフルエンザを人に予防接種したときに、効果が本当にあるのか?」と疑問を持っていたからです。

 

※ここで事前に知っておいてほしいことなのですが、私自身は「インフルエンザの予防接種に効果があってもなくてもどっちでも良い」という、中立的な立場でこの記事を書いています。

 

全ての考察はデータから考えられることを書いているつもりです。

結論

結論から書きます。

  • インフルエンザの予防接種は効果はあり、発症率・罹患率は下がる。
  • 完全に発症を予防できる訳ではない。
  • 完全に発症を予防できなくても、重症度は下がる。
  • 高齢者は予防接種をすることで死亡率も下がる。
  • 発熱などの好ましくない反応も出る可能性もある。
  • 重症度は抑えられるが、結局、完全に発症を抑えられる訳ではないので、予防接種を受けるべきかは個々の判断次第。

という結論になりました。

 

最後にまとめを書きますが、その前にインフルエンザワクチンについての疑問点を一つ一つ考察していきたいと思います。

インフルエンザワクチンの疑問点

インフルエンザの予防接種について、多数の疑問点が出ています。

 

その疑問の出所ともいえる代表的なものが以下のものです。(みなさんも一度は見たことがあるかもしれません)

インフルエンザ・ワクチンは打たないで!


これはインフルエンザの予防接種を批判する代表的な本です。

 

この本は証拠となる引用論文・文献をあまり使用せず、著者の主観だけで意見を書いている部分が多いため、医学的な分野で考えるとかなりの欠陥があるのですが、インフルエンザワクチンについて多くの疑問点を挙げてくれていたので参考にしました。

 

この本に記載されている疑問点・問題です。

  1. インフルエンザワクチンは効果がない。1994年には小中学生への集団接種も中止されてしまった。
  2. インフルエンザワクチンは血液中にしか抗体を作れず、のどや鼻には抗体ができない。ウイルスはのどや鼻から入るから感染はまったく防げない。
  3. インフルエンザワクチンはもともと流行を予測して作られているだけ。そのうえに、インフルエンザウイルスは日々猛スピードで形を変えるので効果は期待できない。
  4. 高齢者の肺炎や乳幼児の脳症はインフルエンザとは無関係。「かかっても重症化を防ぐ」も嘘。そのようなデータは全くない。
  5. 「打っておいたほうがいい」どころか副作用があるから怖い。死亡者も出ている。打たないほうが安全だし安心。
  6. 効かないことを知っている医師も多いが、患者離れが怖いから言えない。
  7. インフルエンザワクチンをうつと、インフルエンザになる
  8. インフルエンザワクチンは儲かるからなくならない。

 

これらについて一つ一つ考察していきたいと思います。

@インフルエンザワクチンには効果がない。1994年には小中学生への集団接種も中止されてしまった。

以下は、20年以上前の研究ですが、予防接種をしたグループとしなかったグループの比較です。(リンク先:http://www.gohongi-beauty.jp/blog/?p=7503

予防接種をしたグループ
  • 1984年にインフルエンザに罹患した人は38.3%
  • 1985年にインフルエンザに罹患した人は18.6%
予防接種しないグループ
  • 1984年にインフルエンザに罹患した人は53.9%
  • 1985年にインフルエンザに罹患した人は30.9%

つまり、予防接種した方が罹患率さえも下がるようです。

 

また、小中学生への集団接種が中止されたことから「小中学生にはインフルエンザワクチンは効果がないのか?」という疑問を感じました。

 

これについては2015年8月に慶應大学病院の研究データがあります。以下そのデータです。

 

インフルエンザの予防接種

毎日新聞の解釈では「乳児」と「13歳〜15歳」の子供に対するインフルエンザワクチンの効果はあまり無かった、という結論にはなっていますが、その他の1歳〜2歳、3歳〜5歳、6歳〜12歳には十分に効果があることを今回の研究ではなっています。つまり

 

『インフルエンザワクチンは小児にも効果がある』

 

という、証明にもなっています。

 

なぜ乳児(6〜11ヶ月)と中学生(13歳〜15歳)では効果が確認できなかったのか?

ここで、なぜ乳児(6〜11ヶ月)と中学生では効果が確認できなかったのかという疑問が生じます。

 

10%でも発症を抑えられていれば「効果は確認できた」に入ると個人的には思いますが、この毎日新聞のグラフだと、「全く効かない」かのような書かれ方です。

 

なぜグラフがないのか分かるかと思い、論文を読んでみると、まず乳児に関しては、症例数が、全体の4727人に対して、49人と、あまりにも症例数が少なすぎることが原因の可能性が考えられます。(論文には「効果は確認できず」とは書かれていません。)

 

症例数が少なすぎると、統計的に正しいデータがとれないことがあります。

 

また、中学生で効果が確認できなかったことについては、実際にこの研究に携わった慶應大学の先生が「今後の検討課題」と話していることから、まだ原因は分かっていないみたいです。

Aインフルエンザ・ワクチンは血液中にしか抗体を作れず、のどや鼻には抗体ができない。ウイルスはのどや鼻から入るから感染はまったく防げない。

確かに、インフルエンザの確実な感染防御には、気道粘膜免疫に直接免疫を持たせる事が合理的であり、また発病からの回復過程には細胞性免疫が重要ですが、(日本で)現在使われている皮下接種ワクチンでは、これらの免疫はほとんど誘導する事ができません。

 

しかし、今のワクチンでも、上記@の通り、効果は明らかに証明されています。

Bインフルエンザウイルスは日々猛スピードで形を変えるのでワクチンの効果は期待できない。

インフルエンザウイルスは頻繁に変異を起こすため、流行毎に今までと違う新しいウイルスとなってしまいます。

 

なので、ワクチン生産に当たっては、次シーズンに流行りそうなウイルスの型を予測して作る必要があります。

 

この「予測」が大きくはずれた場合は、ワクチン接種をしても実際に流行するウイルスに対しては大した効果を持てません。(しかし最近の「予測」はかなり正確で、そういう事態はほとんど起こっていません。)

 

一般に不活化ワクチンによって得られる免疫は時間とともに減弱しますが、インフルエンザワクチンの場合も同じで、しかも他のワクチンと比べても比較的短いです。

 

有効な防御免疫の持続期間は、長くて半年程度と言われています。

C高齢者の肺炎や乳幼児の脳症はインフルエンザとは無関係。「かかっても重症化を防ぐ」も嘘。そのようなデータは全くない

こちらの意見にはデータが載せられていました。(引用元:インフルエンザとは みやたけクリニック)

 

ワクチン接種をすると、接種しなかった場合と比べて、

  • 65歳未満の健常者については、インフルエンザの発症を70〜90%減らす
  • 65歳以上の一般高齢者では肺炎やインフルエンザによる入院を30〜70%減らす
  • 老人施設の入居者は、インフルエンザの発症を30〜40%、肺炎やインフルエンザによる入院を50〜60%、死亡する危険を80%、それぞれ減少させる

このように、インフルエンザワクチンの効果は100%ではありません。しかし明らかに危険を減らし、発症や重症化を抑えているようです。

D「打っておいたほうがいい」どころか副作用があるから怖い。死亡者も出ている。打たないほうが安全だし安心

予防接種による副作用は主に、「副反応」と言われますが、確かに発熱などの副反応が起こることもあります。

 

また、厚労省の2003年のデータですが、2003年でインフルエンザが原因で亡くなった方は1171人、そして、インフルエンザワクチンの副作用による死亡とされるのは9人だったということです。

 

合計で1180人亡くなっています。

 

このようなデータから言えることとして、「予防接種をしたことで、インフルエンザが原因による死亡者の数を9人以上減らせているかどうか」です。

 

予防接種を行わないことによって、死亡者が1181人になってしまったりしたら意味はないです。

 

予防接種をすることでどの程度死亡者数が減るのかをデータとして示さないと、「死亡者が少しでもいるから、打たない方が安全だし、安心だよ」とは言えないと思いました。

E効かないことを知っている医師も多いが、患者離れが怖いから言えない

研究結果などのデータを見る限り、インフルエンザワクチンには効果があると考えられるので、「効かないことを知っている医師」が存在することがおかしいです。

 

著者はただ医師を否定したかっただけなのか、ここについては謎です。

Fインフルエンザワクチンをうつと、インフルエンザになる

現在日本で使われているインフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスを発育鶏卵に接種して増殖させ、それをエーテル処理等で分解、先述したヘマグルチニン(略称:HA)部分を主成分として回収し精製した、不活化ワクチンです。

 

勿論こうなったウイルスは生きていませんから、インフルエンザとしての病原性はありません。

 

世間でよく言われる誤解の一つ、「インフルエンザワクチンを接種すると、インフルエンザにかかる」という事はあり得ないです。

Gインフルエンザ・ワクチンは儲かるからなくならない

これに関してはある意味本当だと考えられます。

 

その理由として、重症化を防ぐ効果がある。そして、高齢者の死亡率も低下させる。といったことがあるため、ワクチンを接種する人(購入する人)にはメリットがあります。

 

購入者にメリットがあれば、当然ワクチンは売れ、儲けが出ます。

 

インフルエンザワクチンは『予防接種してから20年間は効果が継続する』といったものではないので、毎年需要が生まれ、儲けが出続けます。

 

儲けが出続けるものはなくならないと私は考えるので、『インフルエンザワクチンは儲かるからなくならない』というのはある意味本当だと考えました。

まとめ

今回、疑問点を調べて分かったことは

 

「インフルエンザの予防接種は効果がない」という考えはもう古い!です。

 

今回調べてみて分かったことなのですが、予防接種に効果がないという話題が出て、それに関連した本が多く出版されたのは2007年〜2011年です。

 

現在は2015年です。これからは
『インフルエンザワクチンは完全ではないけどある程度予防効果があるから、自分の年齢・健康状態・勤務状況に応じて賢く接種する。

 

という時代なのかもしれません。

 

少しでも多くの人に見てもらって、この記事が少しでも世の中の役に立つことを願っています。

 

最終更新日:2016年1月6日