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心因性嘔吐症とは

心因性嘔吐症(神経性嘔吐症ともいいます)は、嘔吐の原因となる異常が身体には明らかになく、心理的なストレスが原因で嘔吐する病気です。

 

吐いてしまう場面は、「不安や緊張を感じる場面」であることが多いです。

 

心因性嘔吐症はストレスからくるのですが、本人は原因となるストレスを自覚していない場合もあります。

 

また、頭が吐くことを覚えてしまうと、「バスの中で吐いてしまってからは、バスを見るだけで吐くようになる」、「緊張する場面を想像するだけで吐いてしまう」などの症状になることもあります。

 

心因性嘔気症との違い

とても似た病気に「心因性嘔症」というのがあります。

 

これも心因性嘔吐症と同じように心理的なストレスで吐き気がくるのですが、吐くことはほとんどない病気です。

 

吐いてしまう場合は「心因性嘔吐症」、吐き気で止まる場合は「心因性嘔症」です。

 

心因性嘔吐症は子供に多い

心因性嘔吐症は子供に多く発症する病気です。

 

成長途中の子供は脳の中枢神経系が未発達であり、ストレスへの対処もまだ不十分なので心因性嘔吐症にかかりやすいとされています。

 

しかし、大人でもかかることはあります。この場合、30歳未満の若年者が多く、吐くところまではいかず、吐き気で止まっているケース(心因性嘔症)が多いです。

 

なぜ吐いてしまうのか?

心因性嘔吐症では検査しても胃など、身体に異常はありません。

 

それなのに、なぜ吐いてしまうのでしょうか。

 

まず、人間の脳には嘔吐中枢やCTZと呼ばれる、「吐くことをコントロールする部分」があります。

 

過剰にストレスを抱え、処理しきれなくなると、神経がこのCTZを刺激してしまい、吐いてしまうと考えられています。

 

CTZ(chemoreceptor trigger zone)

CTZとは、本来は体内の有害な薬物や毒物に反応して嘔吐中枢に刺激を送る器官です。

 

あまり難しく考える必要はなく、「この部分が反応すると吐こうとする」とだけ理解できれば大丈夫です。

 

「吐く」とはストレスが溜まっているサイン

「ストレスを吐き出す」という言葉を聞いたことがあると思います。

 

東洋医学的には、ストレスを解消せず、過剰に溜めてしまうと、体は「吐く」ということでストレスを解消しようとします。

 

つまり、「吐く」というのは体からのサインなので、「吐く」という部分にだけ注目せず、その原因を探すようにしてください。

 

原因を解消すれば、精神的に吐き出すものもなくなるので、食べ物を「吐く」ということもなくなっていきます。

 

診断方法

心因性嘔吐症の診断は、まず嘔吐の原因となる他の疾患がないか確認します。

 

具体的には、血液・尿・便の検査、内視鏡や腹部エコー検査などを行います。

 

そこで、胃炎などの嘔吐の原因となる疾患がないことを確認してから、症状の発現に心理的なストレスが関係していると判断された場合に診断されます。

 

心因性嘔気症は受診率が低い

心因性嘔症は、吐くところまではいかないので、「ただのストレスだろう」と放置され気味です。

 

しかし、放置していると、吐き気が本当にひどくなり、日常生活に支障をきたしてしまうことがあります。

 

治療方法

心因性嘔吐症の完治において一番大事なことは、原因となるストレスを解消する。そして、頭と体に定着してしまった「吐く」という行動を忘れさせることです。

 

これがなかなか難しい部分ではありますが、具体的にやることは、「できるだけ吐かない時間を長くする」ということです。

 

最初は3日、次は1週間、その次は1ヶ月間吐かないことを目標にしていきます。

 

1ヶ月以上吐き気すら来なければ大分回復しています。

 

人間は忘れていく生き物ですから、1ヶ月も「吐く」ということをしなければ、頭と体からかなり抜けているはずです。(治療開始時の重症度によって、ここの期間には個人差があります)

 

完全に頭と体が忘れれば、「緊張する場面」など、前なら吐いてしまっていた場面になっても吐き気すらしなくなります。

 

具体的なことは治療法のページに書いています。
「心因性嘔吐症の治療」まとめ

 

予後は良好

心因性嘔吐症は予後良好の病気です。予後良好とは分かりやすく言うと「治る病気」ということです。

 

大抵の場合は2年以内に完治してしまうことが多いです。

 

そうでなくとも、心因性嘔吐症が10年以上続くといったことはほとんどありません。

 

しかし、「なぜ長期的に続くことはほとんどないのか?」といったことは科学的には分かっていません。

 

今のところ、「年を取るにつれて精神・神経が安定していくため」と言われています。

 

気を付けること

栄養失調

吐く回数が多い場合、栄養失調になってしまう可能性があるため注意が必要です。

 

吐く回数が少ない場合も、ミネラルなどが失われてしまうので、水ではなくスポーツドリンクなどで補給するようにしてください。

 

また、吐くことを恐れてご飯を食べなくなる人がいます。

 

「ストレスを溜めずに上手に対処していけば吐くことはなくなる」ということを理解させるようにして、少しづつ対応してください。

 

食道炎

胃酸が食道を通過するため、食道を傷つけてしまうことがあります。

 

水を飲んで胃酸を洗い流すなどの対策を行ってください。

 

虫歯

また、胃酸が口を通ると、歯が酸で溶かされて虫歯になりやすくなってしまいます。

 

こちらも水を飲んで酸を洗い流すことで対策できます。

 

まとめのまとめ

  • 心因性嘔吐症は、心理的なストレスが原因で嘔吐する病気。
  • 心因性嘔吐症は子供に多い。
  • 診断は、嘔吐する他の原因疾患がないことを確認してから診断される。
  • 治療はまず原因となるストレスを解消し、頭と体に定着してしまった「吐く」という行動を忘れさせる。
  • 心因性嘔吐症は2年以内に治ることが多い。
  • 吐くことによる栄養失調、食道炎、虫歯などに気を付けないといけない。

 

最終更新日:2015年10月12日