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身体的には問題ないと理解する

心因性嘔吐症の治療では、まず、身体的な問題はないということをきちんと理解、納得することが大切です。

 

患者さんにとっては辛い症状なので、問題はないということを納得できない方がいます。

 

しかし、身体的な検査を繰り返すだけでは症状は改善しませんし、症状に苦しむ時間が長引いてしまいます。

 

治療方法

治療方法はいくつかあり、以下の方法を1種類だけ行っていったり、併用していったりします。

 

どの方法が適しているかは患者さん次第なので、これが正解というものは存在しません。主治医の腕の見せ所でもあります。

 

個人的には、まず薬物療法以外の方法で治療を試し、それでも回復が厳しそうな場合にのみ薬を使用して治療する形が良いと思います。

 

薬物療法

抗うつ薬や抗不安薬の使用が有効な場合があるため、薬を併用して治療していくことがあります。

 

使われる抗うつ薬はジェイゾロフト(セルトラリン)などのSSRIが主流です。

 

抗不安薬ではまず、安全性が高く、それでいて効果も高いデパス(エチゾラム)が処方されることが多いです。

 

SSRIは効果が出るまでに2週間〜4週間ほどかかるので、緊急性が高い場合は飲んでから1時間後には効果が出る抗不安薬を併用して治療することもあります。

 

認知行動療法

症状が悪くなるきっかけや状況、逆に症状が良くなることを明確にし、症状が軽くなるような行動を促していきます。

 

症状が悪くなる状況は客観的に見たら大したことのない状況であることが多いです。

 

しかし、精神疾患にかかる方はその状況をマイナスに受け止めてしまって、それで自分を追い込んでしまっている傾向があります。

 

その、「マイナスに受け止めている」というところを修正することで、ストレスを軽減し、症状を出なくします。

 

アメリカやイギリスでは認知行動療法が精神疾患の第一選択とされていることが多いです。

 

精神療法

症状の原因となりうるストレスについて、その対処をできるようにしていきます。

 

主にカウンセリングを行い、自分の状況を整理することから始まります。

 

周りのサポート

これは特に子供が心因性嘔吐症のときに必要なことなのですが、周りのサポートが必要になってきます。

 

保護者のサポート

子供には「治る病気」であるということを理解させること、そして、これはストレスや不安感からくることが多いので、「吐いてしまっても大丈夫」と安心させてあげることがとても重要です。

 

子供は周りの動揺をとても敏感に察知します。そして自分がさらに不安になり、さらに心因性嘔吐症が悪化するということになってしまいます。

 

周りの大人が毅然とした態度を取り、「患者本人に安心感を与える」、これを意識することが重要です。

 

先生のサポート

子供の場合、先生のサポートも重要になってきます。

 

「吐く」という行為を、他の子供が茶化してしまう可能性があります。

 

そのようなことがあり、「吐いてはいけない」と思いつめると、さらに悪化してしまう可能性があります。

 

状況によっては、「もう学校には行かない」と不登校になってしまう可能性があります。

 

なので、本人(できれば周りにも)に「吐いても問題ない」ということを理解してもらいます。(実際、ノロウイルスなどの感染症ではないので、嘔吐物は危険ではありません)

 

「吐いても問題ない」と安心感を与えることが、吐かないことにつながります。
「吐いたらダメ」と押さえつけると、さらに悪化して吐いてしまうことにつながります。

 

この仕組みを理解することが重要です。

 

成功体験を積む

「何もない状況なら吐き気は来ない」というようになったら、次の段階に進みます。

 

具体的には、以前なら吐いてしまう状況にほんの少しづつ関わるようにしていき、その状況に慣れていきます。これを「成功体験を積む」といいます。

 

そうすることによって、「この状況は大丈夫」と心から思えるようになっていきます。

 

頭と体から「吐く」というのを忘れさせる

心因性嘔吐症の完治において一番大事なことは、頭と体に定着してしまった「吐く」という行動を忘れさせることです。

 

これがなかなか難しい部分ではありますが、具体的にやることは、「できるだけ吐かない時間を長くする」ということです。

 

最初は3日、次は1週間、その次は1ヶ月間吐かないことを目標にしていきます。

 

1ヶ月以上吐き気すら来なければ大分回復しています。

 

人間は忘れていく生き物ですから、1ヶ月も「吐く」ということをしなければ、頭と体からかなり抜けているはずです。(治療開始時の重症度によって、ここの期間には個人差があります)

 

完全に頭と体が忘れれば、「緊張する場面」など、前なら吐いてしまっていた場面になっても吐き気すらしなくなります。つまり完治です。

 

日常生活の改善

睡眠を十分取る

心因性嘔吐症などの精神疾患は「心の病気」と表現されたりもしますが、実際は脳の機能異常です。

 

頭が少し混乱してしまっているだけです。

 

なので、頭が混乱するようなことはできるだけ避けていくのが基本です。

 

その中でも、睡眠不足は一番避けたいものです。

 

睡眠不足になれば、普段健康な人でも脳が正常に働きません。

 

となれば、心因性嘔吐症で悩んでいる人が睡眠不足になるのはさらに大変です。

 

規則正しい生活を送るように意識して、睡眠不足をできるだけ避けるようにしましょう。

 

まとめのまとめ

  • 心因性嘔吐症の治療は、まず身体的な問題はないということを理解、納得することから始まる。
  • 治療では周囲に理解してサポートをしてもらいながら、認知行動療法を中心に行う。薬を併用することもある。
  • 治療中は睡眠時間を十分にとるなど、日常生活の改善を同時に進めていく。
  • 少しづつ成功体験を積み、自信を取り戻していく。
  • 吐く回数が少なくなってくると、頭と体が吐くことを忘れていき、回復していく。
  • 完全に吐くことがなくなったら完治。

 

最終更新日:2015年10月12日