なぜ食塩制限をするのか?
高血圧のとき、なぜ肉でも炭水化物でもなく、「食塩」を制限するのでしょうか。
それは塩分は血圧と密接な関係があるとされているからです。
血液中の塩分濃度を常に一定に保つため
まず、私たちの体は血液中の塩分濃度(ナトリウム濃度)を一定に保つようにできています。
濃度を一定に保てないと命の危険があるほど重要なことで、例えばナトリウム濃度が過剰になってしまう高ナトリウム血症は、成人の致死率が40〜60%と言われています。
なので、私たちの体は塩分(ナトリウム)を取り過ぎると、血液中の塩分濃度が高くなり、塩分濃度を下げるために水分を欲するようになります。
水分を摂ると血管に流れる血液量が増え、末梢血管の壁にかかる負荷が強くなり、血圧を上げてしまうとされていました。
そして動脈硬化になってしまう
高血圧状態が続くと血管はいつも張りつめた状態になり、次第に厚く、硬くなってしまいます。これが、高血圧による動脈硬化です。
動脈硬化は脳梗塞、心筋梗塞などの原因になってしまいます。
血圧が2mmHg下がれば、国内での循環器病による死亡を2万人減らすことができるといわれています。そして、血圧を下げるには塩分を控えることが効果的なので、まず最初に塩分を控えるように言われてきました。
食塩制限は意味がない?
しかし、2011年になって、食塩制限をしても効果がないという研究結果が出てきました。
研究結果
2011年7月6日にTaylorらが6ヶ月以上の経過観察が行われている減塩の介入試験(無作為化コントロール試験:RCT)7件を集めたレビューでは、減塩の心血管病や死亡に対する抑制効果にはエビデンスがないと発表しました。
食塩感受性・非感受性
これはなぜでしょうか。
これは「食塩感受性高血圧」と「食塩非感受性高血圧」が原因です。
高血圧患者さんのなかには食塩負荷に対して血圧が上昇しやすく、減塩により速やかに血圧が下がる一群があり、それを「食塩感受性高血圧」と呼びます。
一方、食塩を負荷しても血圧の上昇は軽度であり、また減塩に対して効果が低い一群があり、これを「食塩非感受性高血圧」と呼びます。
日本人は非感受性の人がほとんどと言われています。
しかし、食塩感受性か非感受性かはまだ科学的な検査では分からないため、とりあえず全員に食塩を制限させているというのが現状です。
日本の食塩制限基準は甘い?
日本では、高血圧患者の食塩摂取量の基準は6.0g/日です。
高血圧でなくても、男性は9.0g/日、女性は7.5g/日です。
しかし、欧米のガイドラインでは3.8g/日を高血圧などの疾患を伴う患者さんの目標値としてあげています。高血圧でなくても、男女ともに6.0g/日を基準としています。
これは日本は元々食塩摂取量が多いため、実現が可能な数字として6.0g/日を設定しているため、欧米に比べ高いのです。
最終更新日:2015年10月14日